背景には大量の浮浪者

(画像:Unsplash

岡田更生館事件の背景には日本中の浮浪者問題がありました。 当時は戦後の混乱期の真っ只中で、空襲で焼け出され家も家族も失った人や外地からの引き揚げ者・復員者は行き場のないまま、街にあふれていました。岡山県でも多くの浮浪者が路上生活を余儀なくされていました。 このような浮浪者の存在は犯罪の温床となり治安の悪化を招いていました。これを憂慮した当時日本を統治していたGHQは日本中に浮浪者を収容する施設の設置を命じました。これによって岡田更生館のような施設が全国に62カ所設置されました。

岡田更生館事件が発覚するまでと大森実の潜入

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収容者にとって地獄のような岡田更生館でしたが、館長達は巧みに施設の実態をカムフラージュしていました。毎日新聞の大森実記者達が実態を暴くまで、監督官庁や警察を含めて世間の多くは岡田更生館を模範的な施設として理解していました。 どのようにして大森実記者達は岡田更生館の実態を暴くことに成功したのでしょうか。そこには決死の潜入取材がありました。

施設脱走者が大阪の毎日新聞本社に駆け込み、地獄のような実態を暴露

岡田更生館の実態を解明する切っ掛けとなったのは岡田更生館を脱走した一人の放浪詩人の訴えでした。放浪詩人の北側冬一郎は駅のベンチで寝ている所を岡田更生館の職員に誘われ施設に入所しました。 職員の巧みな甘言に乗せられた北側冬一郎が入所した岡田更生館は地獄のようなところでした。入所すると直ぐ丸坊主にされ、土蔵のような建物に放り込まれます。満足な食事も与えられず餓死を待つばかりの状況に追い込まれました。 命の危険を感じた北側冬一郎は決死の覚悟で施設を脱走します。地元の警察や県も一蓮托生ではないかと疑った北側冬一郎は大阪まで足を運び、毎日新聞の大阪本社に駆け込みました。

新聞記者・大森実が浮浪者に扮して潜入

北側冬一郎の話を聞いた毎日新聞の大森実記者達はあまりにも衝撃的な話に当初は半信半疑でした。大森実記者は手がかりを求めて過去の新聞をあさり、過去に岡田更生館からの脱走者関連の記事を発見しました。 記事では岡田更生館への疑いが払拭されたことになっていましたが、岡田更生館に足を運んだ大森実記者はその物々しい警備体制に異様なものを感じ、浮浪者に扮して実際に岡田更生館に潜入取材することを決意しました。 大森実記者は周辺の聞き取り調査を行った後、信頼できる検察や警察の人物に話を通し、救出の段取りを固めたうえで、同僚と二人で浮浪者に扮して岡田更生館に潜入することに成功しました。