北朝鮮の思惑

そんなトランプ大統領に北朝鮮との仲介役を頼んでいたわけで、安倍首相の他力本願の交渉姿勢では局面の打開は絵に描いた餅に終わってしまった。 菅官房長官は拉致問題の担当大臣も兼任していたわけで、北朝鮮との交渉には積極的に対応したいと考えているようだ。 とはいうものの、安倍首相と同様で、北朝鮮との独自のパイプはない。 実は、北朝鮮は110もの国々と外交関係を結んでいる。 首都ピョンヤンにはヨーロッパやアジア諸国の大使館が設置され、外交関係のないアメリカですらスイスの大使館経由で北朝鮮とは交渉を重ねてきていた。 現時点ではコロナの影響で、多くの外交官が北朝鮮から帰国しているが、水面下では北朝鮮との関係は続いている。 日本では知られていないが、駐ピョンヤンのドイツ大使夫人は日本人だった。 また、金正恩委員長の父親、故金正日総書記の料理人であった日本人は幼い頃の金正恩の遊び相手役も務めていた。 北朝鮮で地元の女性を妻としてあてがわれ、住まいも日本料理店も提供されている。 他にも戦後、北朝鮮出身の夫に連れられ「地上の楽園」と信じて北朝鮮に渡った日本人妻2000人とその親族が現地には数多く残されたままである。 事程左様に、北朝鮮の内部事情を知るには様々なルートが十分に生かされないまま残されている。 ところが、つい最近でも日本は駐韓国大使に、「北朝鮮への国連制裁を維持することが何より重要だ」と韓国の南北統一相に進言させている。 これでは、金正恩としても日本の新首相に会う必要性を感じないだろう。 「11月の選挙で再選されれば、自分に真っ先に会いたいとトランプ大統領は明言している。ならば、その時に日本の新首相に制裁を解除するように頼めばいいだろう。アメリカにはノーと言えないのは安倍も菅も同じだろう」と高を括るっているに違いないのである。

北朝鮮の資源開発が菅氏の切り札か

つまるところ、現状のままでは、菅外交は漂流しかねない。 というより、「菅丸」は船出そのものができないだろう。 ではどうすれば良いのか。アメリカが本気で日本の望む拉致問題の解決に乗り出さざるを得ないような状況を作ることだ。 そのためには、トランプが喉から手が出るほど欲しがっている北朝鮮に眠るレアメタルの情報を活用する時である。 日本は30年に渡って朝鮮半島を植民地化し、統治した。 その間、北朝鮮に眠る地下資源の現地調査を徹底的に実施したものだ。 実際に北朝鮮の中国国境周辺を中心にタングステン、コバルト、ニッケルなど地下資源の埋蔵状況を隈なく調べ上げた。 財閥系の三菱、三井や旧満鉄などが将来の朝鮮半島の経済発展に欠かせないものとして「足で稼いだデータ」が日本には大切に保管されている。 アメリカは資源探査衛星を使って空からの情報は収集しているが、実地調査はできていない。 そのため、アメリカ政府は日本に対し、そうした北朝鮮の地下資源に関する情報を共有して欲しいと、これまで何度となく要請という名の圧力をかけてきていた。 幸い、日本政府はこの要請に関しては明確な回答を避け、今日に至っている。 何しろ、総額7兆ドル(約750兆円)と目される北朝鮮の地下資源であり、トランプ大統領が狙うのもうなずけよう。 日本とすればアメリカの力も利用しながら、北朝鮮の資源開発に協力できるという「隠し玉」というか最終秘密兵器があることを肝に銘じることだ。 もし、アメリカがこうした北朝鮮の地下資源に関するデータを欲しいというのであれば、金正恩委員長に日本人拉致問題を解決するよう本気で迫るように働きかけることである。 希少金属は氷山の一角に過ぎない。 菅新首相が誕生した際には、先ずは日本の有する対米、対中、対朝鮮半島カードを総ざらいし、掛け声倒れに終わってきた安倍外交の弱点を乗り越えて欲しいものだ。