取り消された再審請求

「大崎事件」は2017年に鹿児島地裁が再審開始を決定したことを皮切りに、福岡高裁宮崎支部も2018年に再審を認めました。しかし最高裁は一転して鹿児島地裁と福岡高裁の判断を覆し、再審を取り消しました。 再審の判断と取り消しに至った経緯について解説します。

地裁と高裁は再審開始を認めた

「大崎事件」の再審請求はこれまで3度行われました。1度目は2002年から2006年、3度目は2010年から2015年にかけて行われましたが、いずれも最終的には認められませんでした。 今回棄却された3度目の再審では、新しい証拠として最新の法医学鑑定書と心理学鑑定書が提出されました。それらは従来の判決の根拠となっていた死因(絞殺による窒息死)、共犯者の証言を否定するものでした。 鹿児島地裁、福岡高裁宮崎支部は新証拠を一部採用し、長兄と妻についての再審を認めました。

最高裁が再審請求を棄却

福岡高裁は2018年に、「大崎事件」の被害者は窒息死ではなく事故死だった可能性が高いと判断し、再審を認めました。 ところが最高裁第は新しい法医学鑑定書について、過去の鑑定記録から類推したに過ぎず、証拠能力がないという判断を下しました。このため再審決定が覆ったのです。 なお、最高裁が地裁と高裁が認めた再審を取り消したのは今回が初めてのケースです。

裁判で開示されなかった多数の証拠

3度目の再審請求は死因の食い違いを証拠に行われましたが、最高裁によって棄却されました。実は「大崎事件」には、この他にも裁判で採用されなかった証拠が大量に存在します。 再審請求では当初から弁護団が検察に、被告を犯人とする証拠の開示を求めていました。これに対して検察側は、すでに出したもの以外にはないと拒否し続けていました。 しかし2度目の再審請求の際、警察および検察から存在しないとされていた証拠が213点も出てきました。3度目の再審請求では、追加で18点のネガフィルム(写真)も出てきたのです。 最高裁は新しい鑑定書を証拠能力不十分として再審を棄却しましたが、これらの証拠が最初の刑事裁判で提出されていれば、有罪判決自体が変わっていた可能性があります。