直前で回避された第三次世界大戦、世界恐慌

2020年は一見穏やかに始まったように見えますが、実際は第三次世界大戦、そして世界恐慌の手前ともいえるべき危機に直面していました。新年のお祝いムードが一変したのは1月3日に起きた米軍によるイランのソレイマニ司令官殺害事件です。 国際法的に言えば宣戦布告なしに他国の軍事司令官を軍の戦力を用いて攻撃し殺害に至らしめる行為は不当な軍事介入です。これがきっかけでイランと米軍の間に大規模な軍事衝突である第三次世界大戦が起きてもおかしくはない。そしてそうなれば世界の原油輸送ルートであるホルムズ海峡が封鎖の危機を迎え、電力やガソリン価格は高騰し、世界的に株価が暴落する世界恐慌が起きる直前といっていい危機的事態でした。その緊迫した事態はわずか5日で終息します。なぜ危機は回避されたのでしょうか?

イラン危機の背景をおさらい

まずはなぜ米軍がイラン革命防衛隊の英雄と呼ばれていたガセム・ソレイマニ司令官を無人攻撃機で暗殺することになったのか、その経緯を簡単に振り返ってみましょう。 そもそもイランという国はイスラム教の中でも少数派のシーア派が支配するという意味で、他のイスラム諸国に対して対立する国家であるという点と、中東地域でも指折りの石油産出国であるというふたつの点で、地政学的に中東地域の火種となっています。 そのイランが独自に核開発を進めているという問題が2006年頃から国際問題となります。あくまで平和利用目的の核燃料の開発だと主張するイランに対して段階的に核開発を放棄させる目的で2015年に国連安保理常任理事国との間に「イラン核合意」が締結されます。

核合意をトランプ大統領が一方的に破棄

これでこの問題は落ち着いたかに見えたのですが2018年にトランプ政権が発足すると、トランプ大統領は米国のイラン核合意からの離脱を表明します。 苦労して合意にこぎつけた協定から離脱するということは国際政治的には不合理な行動ですが、後で詳述するようにトランプ大統領は支持者の人気につながる行動を好んでとる傾向があります。 このときはオバマ前大統領の業績を否定するために方向転換するとしか思えない決定でした。そしてトランプ政権がイランと敵対する態度をとる中で、イランの革命防衛隊や民兵組織も反アメリカ的行動をとり始めます。

イラン革命防衛隊はイランの国軍ではなく民兵組織

ここで理解しておくべきことはソレイマニ司令官が所属するイラン革命防衛隊はイランの国軍ではなく、宗教指導者に直属する軍隊だということです。そしてその組織は民兵組織の支援を行っている。つまり大統領の指揮下にない独立した軍が紛争を起こしているということです。 その象徴的な出来事は2019年9月にイランが行ったサウジアラムコの石油施設へのドローン攻撃でした。報道メディアの立場で言えばイラン国内のテロ集団が行ったテロとも言えますが、国軍ではないとはいえイランの公的軍事勢力がからんだ攻撃でした。サウジアラビア政府はこの事件をきっかけにイランと対立するのではなく、イランと緊張緩和に向かったほうが得策だと政策を変えました。大統領が関与しない攻撃がイランの国にプラスをもたらしたわけです。 このように政府と革命軍組織を使い分けているイランですが、トランプ政権を怒らせたのは2019年12月のイラク・キルクークの米軍駐留基地に対するドローン攻撃でした。アメリカ軍の軍属1人が死亡したことで、米軍は何らかの報復をするとみられていましたが、その報復がイラン革命軍の司令官暗殺作戦だったというわけです。