与党幹部や閣僚が新首相決定前に「解散・総選挙」を“予告”

ー藤野光太郎 (編集者・ライター)ー 新首相による解散・総選挙の話が出たり引っ込んだりしている。今回は新型コロナウイルスワクチンの話を一時中断して、「日本国の新しい総理大臣、誕生!」の急所に触れておこう。 9月21日の夜、衆院解散・総選挙に関する2人の自民党幹部によるBS放送での発言が注目され、新聞でも報じられた。1人はBSフジに出演した下村博文政調会長、もう1人はBS日テレでの甘利明税制調査会長である。 下村「(解散は)年内にあってもおかしくない」「自民党の支持率も上がっている」「若手はほぼ全員が早く選挙をやってもらいたい」 甘利「うまくハンドリングでき、解散しても大丈夫だと国民が認識したらタイミングだと思う」 政権与党の幹部2名が、「いまやれば自民党は勝てるので、解散となれば理解を!」と、まるで“手分け”して世論の反応をみているかのようだ。

伏線のあった菅内閣

実は、これには伏線もあった。 「日本の新しい総理大臣は菅義偉氏」が確実視されたのは、9月16日の国会における首相指名選挙ではなく、同14日の自民党総裁選挙でもなく、9月2日に菅官房長官が党内主要派閥の支持を得て「総裁選に出馬する」と正式表明した瞬間だ。 その出馬表明から1週間後の9月9日、河野太郎防衛相が米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のオンライン討論に出演し、同研究所の幹部であるマイケル・グリーン氏から解散の時期を問われた。 これに対して河野氏は、「おそらく10月のどこかの時期だ」と躊躇なく即答。メディアがこれを報じて物議を醸した。党組織としてこれは叱責ものだからである。 ところが、河野防衛相はお灸をすえられるどころか、菅内閣の行政改革相として閣僚に再任された。

解散・総選挙が「今秋か来秋か」は、米大統領選の見極め次第

筆者は、9月22日付のSNSでこう記した。 《解散・総選挙となれば、与野党すべての衆院議員が全国に散って本来職務を二の次にする。10月中なら約1か月間。新型コロナ禍を理由に党総裁選で党員投票を排除した「政治的空白なきように」はどうした? 秋冬の到来が懸念される変異ウイルス蔓延に事前対策の気配はないが?》 本来、解散の有無は首相が判断する。その有無と時期を政府閣僚が即答し、与党幹部が党内ではなくテレビで意見したのは、各々の発信先が「米国」と「世間」だからである。普通ならいずれも叱責を食らう言動だ。従って、3者の発言には党内の事前承認があったはずである。 もし、菅首相に「解散は今秋か来秋か」との迷いがあれば、米大統領選の結果が重要になる。すでに対日交渉の経験があるトランプ大統領とは異なり、バイデン勝利となれば、日米交渉で軋轢や不都合が生じる。なぜなら、密室で決まった「後継者」は「民意」を欠いており、「総選挙による国民の自民党支持」を“準備”しておかねば米国が日本に対する要求を躊躇せねばならない、との忖度があるからである。

今秋の解散は長期政権を見通せる

今秋解散の場合、日程を逆算すれば遅くとも10月の第2週までに米国での勝者を見極める必要がある。菅自民党政権にとって、今秋の解散・総選挙なら勝つ確率は高いが、そこで生じる政治的空白に批判を浴びる。来秋なら首相再任の如何は博打だが、成功すれば長期政権も見通せる。 ちなみに、いずれも「規制緩和」を名目とする巨大外資誘導に拍車がかかり、一般庶民のためにはならない。