高野達男は三菱樹脂の対応を憲法の基本的人権を侵害していると主張

高野達男氏は日本国憲法には「思想・信条の自由」が明記されており、学生運動に参加しただけで採用を拒否されることは基本的人権の侵害にあたると主張しました。 これに対して三菱樹脂側は、同じ日本国憲法に定められている「企業の経営活動ないし営業の自由」を主張したことから、双方の主張は真っ向から対立します。 つまり、三菱樹脂事件は一個人の採用にかかる問題ではなく憲法解釈の問題となりマスコミにも大きく取り上げられ、その行方が注目されるようになったのです。

三菱樹脂事件の裁判と判決

三菱樹脂事件にかかる裁判は1964年に始まり、1976年に和解が成立するまでに13年もの長い歳月を費やされました。 その理由の一つに裁判が最高裁までもつれ込み、日本国憲法が私人相互間の問題に及ぶのかといった難しい判断を求められたことがあげられます。 その結果、この判例が採用や採用拒否に関する訴訟問題において一つのリーディングケースとなりました。

憲法の私人間効力が争点となった

三菱樹脂事件における最大の争点は、日本国憲法の効力が企業と個人の雇用問題といった私人相互間にまで及ぶのか否かといった点でした。 そもそも、日本国憲法の人権規定は日本国家と私人相互間の関係において適用されることが前提となっています。 したがって、三菱樹脂事件は日本国憲法の人権規定の適用範囲が最高裁において明確に示される初めてのケースであり、その後の労働裁判にも大きく影響することから大きな注目を集めたのです。

東京地方裁判所での判決

三菱樹脂は従業員の雇用にあたっては法律で制限されない限り、会社側の自由であると主張するとともに面接試験において虚偽の申告があったことにも言及しました。 これに対して高野達男氏は学生運動を理由にした採用拒否は「思想・信条の自由を侵害するもの」であり労働基準法にも反すると反論します。 その結果、東京地裁は学生運動の事実を隠していたとしても、それが契約を拒否する合理的な理由にはならないとして、原告側の主張を全面的に認める判決を下すのです。