「ニューノーマル」としての在宅勤務の定着

わが国で新型コロナウイルス感染症拡大が深刻化したのは2020年3月で、4月には緊急事態宣言が発出されました。 世界的に国境が実質的に封鎖され、国内でも外出自粛によって社会・経済が深刻な打撃を受けています。 そのなかで、通勤やオフィスでの“3密”を避けるため、多くの企業が在宅勤務を導入しました。 図表1にあるように、日本生産性本部の調査では、20年5月には、1週間のうち会社に出勤した日が「0日」という人が32.1%に達し、反対に「5日以上」という人は9.5%と1割を切る水準に下がりました。 ほとんどの企業が在宅勤務を導入し、出勤日数が大幅に減少したわけです。 緊急事態宣言が解除されて以降、以前のように出勤する人が増えたとはいえ、7月現在でも1週間のうちの出勤日数が「0日」という人が19.8%と2割近くに及び、「1~2日」とする人も28.8%に達しています。「5日以上」とほぼ毎日出勤する人が22.1%に増えたとはいえ、在宅勤務がウィズコロナ時代のニューノーマルとして定着しつつあるといっていいでしょう。

勤務先との時間距離を気にしなくても良くなった

毎日出勤する必要がなくなれば、住まいの選び方も変わってきます。 これまでは都心やその近くにある会社への時間距離を考えて、多少狭くてもより都心に近い住まいを選択する傾向がありましたが、出勤回数が大幅に減少すれば、その必要がなくなります。 週1回程度の出社であれば、多少通勤時間が長くなっても苦にならないでしょうし最寄り駅からの徒歩時間についても同様です。 それよりは、多少遠くてもいいから安くて広めの住まいを確保したいと考える人たちが増えています。 というのも、これまで日本の住まいの多くは、自宅で仕事することが前提にはなっていませんでしたから、在宅勤務するためのワークスペース確保に苦労することが少なくありません。 また、簡単に外出できないので子どもたちも在宅時間が長くなり、家のなかを走り回ったりすることが多くなります。 狭い家では音の問題が気になりますし、仕事に集中できません。 そうした事情から、多少会社から遠くなっても、少しでも広い家を、また子どもたちが安心して生活できる、環境に恵まれた住まいを求める傾向が強まっているのです。

通勤時間1時間の差が5000万円の差に

いうまでなく、都心からの時間距離が長くなるほど住宅の価格は安くなります。 たとえば、中古マンションの相場がどうなっているのか、JR横須賀線を例にとってみてみましょう。 図表2にあるように、品川駅の3.3㎡当たりの中古マンション相場は359万円です。20坪、66㎡のマンションだと7180万円になります。 それが、横浜駅だと226万円に、大船駅では126万円に、そして終着駅の久里浜駅では61万円まで低下します。66㎡換算の価格は横浜駅が4520万円、大船駅が2520万円、久里浜駅が1220万円です。 久里浜駅なら、品川駅の約6分の1、横浜駅の約4分の1で手に入る計算です。 久里浜駅からは品川駅や東京駅などの都心までには1時間強の時間がかかりますがその1時間強の差が、価格にすれば3000万円、5000万円もの差になっているのです。 しかし、通勤時間を気にしなくてもいい在宅勤務主体の人であれば、久里浜駅でも全然問題はないでしょう。

UJターンやIターンを考える人も増えている

都心から離れるほど価格が安いので、広めの住まいを求めることも可能になるかもしれません。 3.3㎡単価が61万円の久里浜駅で25坪、82.5㎡の中古マンションを求めるとしても、1525万円で可能です。 現実には物件数はさほど多くないでしょうが、30坪、99㎡の広いマンションでも1830万円と、2000万円を切る価格で購入できる計算です。 久里浜駅はJR横須賀線の始発駅なので、都心やその近くまで1時間ほど座って出勤できますから、読書や睡眠などゆったりした時間を過ごせます。 しかも、在宅勤務の人であれば、通勤可能な範囲の制約がなくなります。 会社が通勤費を負担してくれるのであれば、新幹線通勤などもありでしょうし、思い切って地方への移住を考える人もいるようです。 ただ、そうはいってもいきなり見知らぬ土地へのIターンは不安なので、現実には故郷やその近くへのUターン、Jターンを考える人が多いようです。