連載コラム第2回 新型コロナワクチンは治験期間を大幅短縮

藤野光太郎 (編集者・ライター)

日本が基本合意した外資製薬会社の治験ワクチンで副反応

新型コロナウイルスワクチンの治験(臨床試験)で、英製薬大手アストラゼネカが「被験者の英国人女性が深刻な脊椎炎症障害を発症」と明かし、世界的に行っていた治験の一時中断を発表した。前回の連載で「近い将来、副反応が続発するリスクはかなり高い」と指摘したばかりだ。 新型コロナウイルスのワクチンで、日本政府がすでに供給の基本合意を交わしている相手は、同社と米製薬大手ファイザーの2社。アストラゼネカは来年初頭から日本に1億2000万回分の新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」を供給し始めることになっている。

英アストラゼネカには「副作用の過少報告」という“前科”がある

前回、「健康被害が生じた場合の救済措置、企業との損失補償契約」で副反応等の被害が出たら、その補償はメーカーではなく政府が国民から徴収した税金で賄う形になっていることを伝えた。 実は、アストラゼネカについて筆者には印象深い記憶がある。同社はかつて、「副作用の過少報告」を厚労省の安全対策課に注意されて初めて、そのことを“公表”したからだ。指摘されなければ自ら公表しただろうか、という疑念が記憶として残っていたのである。 もとより、ワクチンに副反応はつきものだ。臨床試験は発症の有無を試すことが目的であり、治験中に副反応が出てもおかしくはない。但し、上述のようにその「リスクは高い」とあえて指摘したのは、これも前回述べたように、新型コロナのワクチン開発が「期間は未曽有の超短期」「生産目標数は世界規模で莫大」「ウイルスと免疫の関係はまだ未解明」だからである。

加熱する新型コロナウイルスのワクチン開発競争には驚くべき実態が

人類初のワクチン開発は「天然痘」から始まり、それは「根絶宣言」がなされた初めての伝染病ともなった。新型コロナに対しては、今年3月16日に米ワシントン州シアトルで行われたのが初めての試験だ。ただし、そもそもワクチン完成までの道は遠く、費用は莫大だ。 急速に感染拡大する伝染病に対して、ワクチン開発は時間との闘いである。とはいえ、それは健康体に注入するものであるため、深刻な副反応が発症しないよう治験は最も重視される。通常、治験は次の3つの段階で進められる。 ➀少人数の接種で数ヵ月、危険な副反応の有無を確認 ➁200人程度に接種、副反応と免疫系の活性を確認 ➂数千人に接種、さらに副反応の有無を確認 多くの場合、この全工程に最低4〜5年、ときに10年が費やされ、治験対象数も5000人を超える。 ところが、新型コロナのワクチン開発を製薬各社は、例えば「治験1年半」などという異例の期間短縮で進めているのである。それを日本人は1億2000回分、接種するのだ。事情を知れば、筆者に限らず誰もが、深刻な副反応の続発を懸念せざるを得まい。 紙幅が尽きてきたので、治験期間を超短縮したワクチン開発が“公認”されている背景については、次の機会に詳述する。

藤野光太郎 (編集者・ライター) 1980年代以降、近代・事件・賭博・エネルギー・貿易・基地・食品・薬などの動きを月刊誌・週刊誌・専門誌で企画編集・取材執筆。最近では「プレジデント」「ビジネスジャーナル」などの本誌やネットメディアでも活動中。