事例②医療保険

多くの現代人は健康寿命を延ばすため禁酒や禁煙、ウォーキングなどによる健康維持対策をします。 ところが医療保険や死亡保険に加入した途端、保証をあてにした安心感からこれらの活動を止めてしまうことがあります。これも「モラルハザード」の一例です。結果的に保険会社の支払いが増加し、保険加入者の負担額も増えてしまうことになりかねません。 保険会社はこれらの「モラルハザード」対策として、健康状態が良い加入者に対する優遇策や喫煙者へのペナルティなどを保険の制度設計に盛り込んでいます。

事例③インセンティブ設計に関して

人は安定した収入を職場に求めます。これは人間心理として決して非難されることではありません。しかしながら会社側の立場に立つと、会社にたいした貢献もしない社員と多大な貢献をする社員を同等の待遇にするには、いわゆる「モラルハザード」的な抵抗感があります。 このため多くの会社では業績に見合うインセンティブ制度を設けて、頑張った社員にはそれ相応の処遇をすることが一般的です。 このインセンティブ制度は慎重に設計する必要があります。つまりインセンティブ付与による生産性向上と安定的に働ける環境整備を両立させる工夫が必要なのです。

モラルハザードと逆選択の違い

(画像:Unsplash

「モラルハザード」も「逆選択」も結果的によくない状態に陥るという意味では同じです。また両者とも原因が情報の非対称性(双方で持っている情報の質と量に違いがあること)にあるという意味でも同じといえます。両者の違いはその動機・意図です。 「逆選択」は良かれと考えて行ったことが結果的には徒(あだ)となって悪い結果になってしまうことです。金融機関は投資先との情報の非対称性の故にリスク回避のため融資に高いハードルを設けますが、それが結果的に優良な融資先を遠ざけ、そうでない融資先を引きつけてしまうのです。 一方の「モラルハザード」の方は情報の非対称性をいいことに手抜きをしたり不当に利益を得たりすることです。管理職は営業マンの行動全体を把握できないので、営業マンはそれをいいいことにどこかで油を売ったりすることが起こりえます。

モラルハザードとゲーム理論の関係

(画像:Unsplash

「ゲーム理論」を推し進めることによって結果的に「モラルハザード」に陥ることになることがあります。 「ゲーム理論」は「囚人のジレンマ」ともいいます。相手の出方によって自分の利益を最大(損失を最小)にしようとする戦略的発想のことです。情報の非対称性がなく双方が互いの意図を十分に理解できていれば「ゲーム理論」によって双方に良い結果をもたらすことが可能です。 しかしながら現実には情報の非対称性がありますから、相手が如何なる行動をとっても自分の不利益を最小化しようとして、結果的に望ましくない行動を双方が取ってしまい「モラルハザード」に陥ってしまうことがあるのです。